荻清隆 心の相談室

西日本心理療法センター 荻清隆(おぎ きよたか)

【住所】〒815-0036 福岡市南区筑紫丘1丁目12-1-519
【問合】TEL/092-561-4711 携帯/080-5249-8554

  • 1930年/久留米生まれ。
  • 1973年/西日本心理療法センターを開設。催眠・内観・交流分析・ゲシュタルトなどの心理療法により、1500以上もの臨床を手掛けている。
  • 1975年/同センター内にオギNT研究所を併設。独自の心理療法を開発する一方、多くの企業での企業内教育や市民講座や講演活動なども行っている。
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荻先生の診療日誌

【著者】荻清隆 【頁数】178P 【体裁】B6版
1991年1月~1995年7月まで、「GANSO求人ふくおか」に連載された「荻先生のメンタルヘルス」を再編集した「荻先生の診療日記」を販売しています。 便箋に、住所・氏名・年齢・性別・連絡先を記入の上、1,000円分の切手を同封し下記住所までお送りください。お申し込み郵便到着後数日中に発送致します。

〒810-0023
福岡市中央区警固2-13-21
パインヒル警固3階
(株)アビリティ・キュー内
「荻先生の診療日記」購入希望 係

強迫障害者の世界

私の心は暴走自動車だ。

朝トイレに行きたくなって眼が覚めると、さっそく暴走自動車が動き出す。トイレのドアを開けるのにノブに直に触れることを私の心が拒む。そこで丁寧にドアのノブをティッシュペーパーで包んでドアを開ける。これに所要した時間は10分。次にトイレットペーパーに消毒液を付けて便座を拭くこと30分、やっとの思いで用をたしてお尻を拭くのが大仕事、トイレットペーパーを10メートル位引っ張り出して幾重にも折りたたみ、手が汚れないように慎重に拭く。

しかしまだきれいになっていない気がして、またトイレットペーパーを長く引っ張り出して拭く。これを5回ほどして50分経過した。そして心が手の汚れを気にし始める。横の洗面台の上から石鹸を取り、手を洗い始めるがなかなか汚れているという不安が取れない。

石鹸が無くなりかけたところで心がもうこれで良いと許可を出してくれた。が、手は指紋が消えかけ赤くなって今にも血が流れ出そうだ。ここまでで2時間を要した。

これから朝食に向かうと、心があれに触ってはダメ、これに触ってはダメと命令して来る。それが不条理だと頭で解っていてもどうにも出来ない。それで側にいる母親にあれを取って、これをどかしてと命令する。そして思うように出来ない自分の心に腹が立ってきて、母に怒りをぶっつけて喧嘩になる。このような事が一日中続き地獄のような生活を送っている。

上記の文章は、A子さんが電話を掛けてきたときの言葉の要約です。A子さんは、26才の独身で母親と二人暮しです。父は彼女が小学1年生の頃病死しました。兄弟は兄が一人いて家から出て働いています。

彼女は精神科で「強迫性障害(不潔恐怖症)」と診断され、自宅から外へ出ることが出来ません。たまたまこのホームページの記事を見た母親の勧めで、電話を掛けてきたのでした。以下は電話によるカウンセリングの様子です。

私 あなたは自分の身体についてどんなイメージを持っていますか?

A 私の身体は汚いと思います。

私 どんな風に汚れていると思いますか?

A 何かネバネバしたものが身体全体にあるような気がします。

私 あれをしてはダメ 、これに触ってはダメとあなたの心に命令しているのは誰ですか?

A 解りません。

私 それでは、いつ頃からそのような命令が聞こえるようになったのですか?

A 多分中学2年生の頃からだと思います。

私 あなたは初潮はいつ頃ありましたか?

A 小学5年生の後半だと思います。

私 あなたの強迫性障害の原因になにか心当たりがありますか?

A 何が原因か解りません。

私 それでは催眠で原因を調べてみようと思いますので 、お母さんに手伝ってもらって準備して下さい。

電話で彼女に催眠を掛けて 、年令退行が出来る深さまで導入出来ました。以下は催眠のようすです。

私 あなたが一冊の本を手に持っているところを想像してください。本にはあなたの半生を写した写真があります。あなたが今開こうとしているページは、あなたの現在の年齢を写し取ったところです。でも、あなたが前のページを開くと、突然一年前に戻ったあなたになります。そしてその当時感じていた事柄を今また感じ、その時知っていたことを今また知ります。ページを一つ一つ前に戻していくごとに一年、一年、以前の自分に戻って行きます。そしてあなたが身体全体にネバネバしたものを感じると、右手が上がっていきます。さあ、それでは前へ前へとページを開いていってください。………………右手が上がりましたね。今何歳ですか?

A 小学4年生です。

私 身体のネバネバの原因が見えてきますよ。

A ………イヤ!イヤ!汚い!兄ちゃんが私の身体に何かしている!身体にベトベトしたものを塗り付けている。気持ち悪い!(わーっと泣きだす)

私 大丈夫ですよ! あなたはそれから何度もお風呂に入ったでしょう。あなたは汚れてはいない、清潔ですよ。それでは本のページを後の方へとめくって現在まで戻って下さい。戻ったら右手が上がります。………………上がりましたね。それでは催眠から覚めましょう。(彼女を催眠から覚ます)

私 中二の頃を思い出してください。あなたが何度も手を洗うようになったきっかけを話して下さい。

A 恥ずかしいわ。兄が風呂から上がってきて、裸の姿を見た時からです。その時から何か身体中がネバネバしてきて、とても汚れていると感じるようになったのです。先ほど先生から尋ねられた時、恥ずかしくて、解りませんと言いましたがすみません。

私 さぁこれから現在に心を向けましょう。汚れていると言う不安が起きたときには、腹式呼吸をゆっくりして心を落ち着かせて、現実を見るのです。そうすれば、あなたの周りの人たちが、それほど手や身体を洗わなくても健康に生活していることに気づくでしょう。そして脅迫観念はしだいになくなり、普通の生活できるようになりますよ。

このような方法を繰り返し行なって一年経過した現在、彼女は強迫性障害はほとんどなくなり、外出もできるようになっています。今は働らくために仕事を探しています。

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